「新燃岳、6年ぶりの噴火(10月11日~13日) その1」の続きです。
◎10月14日土曜日
お昼近くまで寝ていたこの日は Twitter で噴火しているのを知って(テレビは基本見ないのだ)、午後の予定はすべてとりやめ、家から一歩も出ずに新燃岳の噴火のニュースにつきっきりになってしまった。
火山の状況に関する解説情報 第18号(10月14日16時30分発表)によると、
本日(14日)08時23分頃に噴火が発生し、14時20分まで継続しました。この間の噴煙の高さは最高で火口縁上2300mでした。新燃岳周辺では、噴火に伴う鳴動が聞こえているとの情報がありました。
また、15時05分から噴火が発生し、灰白色の噴煙が火口縁上1000mまで上がり雲に入りました。16時現在も噴火が継続中です。
今後も噴火の発生と停止を繰り返すことがあります。本日、実施した聞き取りによる降灰調査の結果、鹿児島県の霧島市、曽於市、宮崎県の小林市から日向市にかけて降灰を確認しています。
火山性微動は、08時23分の噴火発生後から振幅が増大し、12時頃からやや小さくなりましたが、依然、消長を繰り返しながら継続しています。
地殻変動観測では、新燃岳の明瞭な山体膨張を示す傾斜変動は認められません。
これが14日朝噴火したときの様子(クリックするとアニメーション)。気象庁はデータをみて判断しているため若干のタイムラグはあるが有色噴煙が上がったタイミングを「噴火」と呼んでいるので、噴火する前から白色噴煙は出ていたことが分かる。
このブログでは再三の繰り返しになるが、気象庁の定義する「噴火」とは
火山現象として、火口外へ固形物(火山灰、岩塊等)を放出または溶岩を流出する現象
つまりどれだけの高さに白色噴煙(水蒸気)が達しようと、これは噴火と呼ばない。また固形物が火口外に出ない場合も同様。この辺の区別がちゃんとついていないと、2015年7月の箱根山の噴出現象について「降灰が確認されているが、気象庁は火山灰の噴出が短時間だったことから「現象は噴火だが、住民の不安をあおるなどの防災上の影響もあるので、噴火との表現は適切でない」」とかいう頓珍漢な説明が生まれることもある(報道陣に説明した気象庁の担当官の説明が分かりやすく説明するのに失敗したこともあると思うが、それをそのまま流してしまうメディアにも責任の一旦はある)。
話がそれたが、新燃岳の噴火活動について気象庁が提供する監視カメラ画像を見ながら判断する簡単なポイントは噴煙の色。
さかい まさひろ@sassyos2
有色噴煙から白い噴気に変わって、今日の噴火は終わったぽいね。#新燃岳噴火 https://t.co/LgpRgmiBxM
2017年10月14日 14:48
ただ火山カメラの映像ではもやがかかった空模様で火山灰が混じった「灰白色の噴煙」なんて見分けようがないのであくまで簡易な方法だが、これで画像を見ながらリアルタイムにツイートするなど噴火を楽しむことはできる(降灰している地域でそんな余裕はないかもしれないが)。
◎10月15日日曜日
⚒F. IKGM🌋@geoign
韓国岳カメラ、7時過ぎに誰かが掃除したのかな? 回っているのはワイパー?
2017年10月16日 08:55
火山の状況に関する解説情報 第19号(10月15日13時00分)によると、
昨日(14日)15時05分に発生した噴火が、本日(15日)13時現在も継続しています。今後も噴火の発生と停止を繰り返すことがあります。
本日朝、新燃岳から北西方向のえびの高原で、強い火山ガス臭を感じているとの情報がありました。
新燃岳上空では南の風が吹いており、今夜もこの状態が継続すると予想されます。火山性微動は、依然、消長を繰り返しながら継続しています。
地殻変動観測では、新燃岳の明瞭な山体膨張を示す傾斜変動は認められません。
火山カメラでは確認できないが、14日15時過ぎの噴火が継続中。ただし韓国岳のカメラをみると朝7時半頃から火山灰の付着量が増えていているようだ。
さらにえびの高原のガス臭について宮崎県「火山ガスへの警戒情報(えびの高原(硫黄山)周辺)(平成29年10月15日更新)」によると、
10月15日の朝から、えびのエコミュージアムセンターにおいて、高濃度の二酸化硫黄ガスが検出されています。(簡易測定で7ppm超)。新燃岳から発生した火山ガスが、風に乗って流れてきているようです。
と発表。この日えびのエコミュージアムセンターは臨時閉館。
火山の状況に関する解説情報 第20号(10月15日16時20分)
新燃岳では、本日(15日)16時現在も活発な噴火活動が継続しているもようです。
本日実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、前回(10月13日、1日あたり1400トン)と比べ、増加している可能性があります。
火山性微動は、依然、消長を繰り返しながら継続しています。
地殻変動観測では、新燃岳の明瞭な山体膨張を示す傾斜変動は認められま
せん。
その後15日夜に発表された「霧島山(新燃岳)の火口周辺警報を切替え警戒が必要な範囲を2kmから3kmに拡大」によると、
霧島山(新燃岳)では、本日(15日)に実施した現地調査で火山ガス(二酸化硫 黄)の放出量が1日あたり11,000トン(前回13日1,400トン)と急増しました。火山性微動も継続しており、振幅も本日午後から更に大きくなっています。
◎10月16日月曜日
火山の状況に関する解説情報 第21号(10月16日17時00分)によると、
本日に入り、新燃岳付近で低周波地震の増加がみられています。
火山性微動の振幅は、次第に小さくなっていますが、依然継続しています。
本日実施した現地調査では、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量は、1日あたり500トンと昨日(15日、1日あたり11000トン)と比べて急減しています。
なお、九州大学より、新燃岳の南西側斜面の数箇所で新たな噴気が上がっているのを確認したとの情報提供がありましたが、本日は天候不良のため、確認できませんでした。
地殻変動観測では、新燃岳の明瞭な山体膨張を示す傾斜変動は認められません。
また、硫黄山の南西3km付近で、10月6日以降、地震が時々増加しており、13日の16時から22時にかけて一時的に多い状態となりました。その後は少ない状態で経過しています。
韓国岳カメラに付着する火山灰の量は激減しているが、天候のせいか噴煙についての情報はなし。傾斜計データに基づく新燃岳の山体膨張は認められないし、火山性微動の振幅は減少中だが、一方で気になる「低周波地震の増加」。ただしどの深さで起きているのかは発表されず(【注】低周波地震は富士山でも頻繁に観測されていることからして、マグマ噴火に直接つながるとは限らない)。
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/monthly_v-act_doc/tokyo/02m08/300_02m08memo.pdf
「本日16日朝にえびのエコミュージアムセンター職員が再測定を行なったところ、0.0~1.4ppmでした」(宮崎県)。
「新燃岳2017年|災害と緊急調査|産総研地質調査総合センター / Geological Survey of Japan, AIST」ページに 「現地調査報告 2017年10月12日~14日 (上空観察及び噴出物調査) 第二報」が掲載された。
上川瀬名@Yokohama_Geo
新燃岳噴火、宮崎・高原町で避難所開設(TBS系(JNN)) https://t.co/J6qgb2n7nn 「対象となるのは、高原町内の、花堂区や南狭野区など45世帯101人」
2017年10月16日 13:54
ところでこの日、宮崎県高原町で避難所が開設されたが、火砕流の流下方向の先に避難所が設置されていることが話題になった。
政府インターネットテレビの説明によると、赤い枠内が火砕流発生時に避難を要するエリアなのだが、「ここの中に居る人たちをオレンジの地区ごとに区切りまして、ここの人たちは黒い線のルートを通ってここに逃げましょう…というものを定めたものが 具体的な避難計画になります」。これについて鹿児島大の井村隆介准教授曰く、
Ryusuke IMURA@tigers_1964
対象地域は,このビデオ(https://t.co/UGxIPVjUch)で例示されたところ.このビデオのいう方向に逃げるのは間違い. https://t.co/A00BsI2lYS
2017年10月16日 19:03
なぜかというと、ハザードマップ(避難計画)は火砕流の到達範囲に自信があるのか、火砕流がさらに100m伸びたときのことを想定していないため(井村教授の過去ツイート)。
もし火砕流に巻き込まれそうになった場合ベストなのは火砕流が流下する方向とは直角になる向き、つまり谷間に位置する集落なら生活道路を車で下りずに、山の尾根を上るのがいいのかもしれない(当然避難所はない)。こうなるのは致し方なくハザードマップの限界といえるので、火砕流が起きる前に避難させるしかないのだろう。ただし警戒レベルが上がらない以上、今は「自主避難」になる。そして現状誰も避難してこないとしても、こればかりはどうしようもない。
◎10月17日火曜日
火山の状況に関する解説情報 第22号(10月17日16時00分)によると、
新燃岳では、14日15時05分から継続していた連続噴火は、本日(17日)00時30分頃に停止したもようです。その後、噴火は観測されていませんが、活発な火山活動が続いています。
監視カメラによる観測では、天候不良のため噴煙の状況は確認できません。
新燃岳付近の火山性地震は、昨日(16日)に324回と多い状態となりました。本日は15時までに22回発生しました。
火山性微動は、11日17時16分から16日18時55分頃まで継続し、その後も時々発生しています。
地殻変動観測では、新燃岳の明瞭な山体膨張を示す傾斜変動は認められません。
また、えびの岳付近(硫黄山の南西3km付近)の地震は、15日以降、観測されていません。この付近は、2011年の新燃岳の噴火でマグマを供給したと推定される領域です。
14日15時過ぎの噴火は17日00時30分頃停止。11日17時16分より継続していた火山性微動は
16日18時55分まで継続。一連の新燃岳の活動において火山性地震のピークは16日だったことが明らかになった。
「本日17日9時にえびのエコミュージアムセンター職員が再測定を行なったところ、0.3ppmでした」。(宮崎県)
高原町が「新燃岳噴火に係る降灰の排出について(お知らせ) 」を発表した。火山灰専用の袋が配布されて、平日のみ収集を行なうようだ。雨に流れた火山灰は側溝や排水管を詰まらせる恐れがあるし、火山灰が積もったままだと木造家屋に負担になる。ある意味雪よりも厄介なので、火砕流の危険があっても火山灰がいつ降るか分からない状態では、自主避難したくない人の気持ちはよく分かる。
それから産総研が「2017 年 10 月 11 日の霧島山新燃岳噴出物構成粒子の特徴(第二報)」を発表。
G 粒子は 2011 年噴火の 火口内溶岩 ではなく, 新たに供給されたマグマ由来 である 可能性 が高い . さらに Fe - Ti 酸化物 は 顕著なラメラ 構造を示さ ないことから , G 粒子 の冷却速度 は比較的早 いと考えられ , 新たに供給されたマグマ 由来である ことを 支持する .
これで第一報で出ていた2011年噴火で火口内を埋めた溶岩の高温部由来という見方が否定された。
◎10月18日水曜日
火山の状況に関する解説情報 第23号(10月18日16時20分)より
新燃岳では、昨日(17日)00時30分頃を最後に噴火は観測されていませんが、活発な火山活動が続いています。
監視カメラによる観測では、天候不良のため噴煙の状況は確認できません。
新燃岳付近の火山性地震は、昨日は23回発生しました。本日(18日)は15時までに110回発生しました。
明瞭な火山性微動は昨日06時以降発生していませんが、振幅のごく小さな火山性微動が継続しています。地殻変動観測では、新燃岳の明瞭な山体膨張を示す傾斜変動は認められません。
また、えびの岳付近(硫黄山の南西3km付近)の地震は、昨日21時から本日03時までの間に23回発生しました。この付近は、2011年の新燃岳の噴火でマグマを供給したと推定される領域です。
韓国岳のカメラが灰で汚れていないので、噴煙はおそらく白色噴煙が出ているのだろうなと想像するのは容易。火山性地震は増えたり減ったりがつきものだから、回数を一喜一憂してもしょうがないし。山体膨張を示す傾斜変動はないものの、気になるのはえびの岳付近での地震が増えているところかな。
つくばサイエンスニュースによると、
2010年5月以降の地殻変動量に基づき山体膨張の原因と考えられるマグマの位置、深さ、体積変化量などを計算したところ、新燃岳火口の西北西約10km、地下約6kmの深いマグマ溜まりと、新燃岳火口直下、地下約3kmの浅いマグマ溜まりにマグマが蓄積していることが推定された。膨張に関与したマグマの量は、深いマグマ溜まりで約600万㎥(東京ドーム約5杯分)、浅いマグマ溜まりで約100万㎥(同約0.8杯分)と推定されたという。
第23号で述べているのは、深いマグマ溜まりの方だね(霧島山の地殻変動|国土地理院)。
この日、えびのエコミュージアムセンター職員が朝9時に二酸化硫黄濃度を測定したところ、0.0ppm だったため、今後火山ガス警戒情報の発表をしないとアナウンス(宮崎県)。
ちなみにこの日夕方 NHK が「新燃岳 「水蒸気噴火」から「マグマ噴火」に移行か」という衝撃記事を発表したが、話したとされる中田教授がFacebook で反論するという出来事があった。
「もっとも事実を語っている」という中田教授側自身も「他機関がマグマ物質が見つかったと報じた(私は信じていませんが)」と、傍から見ればNHK並みの文章力でどっちもどっちという感じ(汗)。おそらく中田教授が信じていないというのは、産総研の第2報のことなのかなと思ったが、その辺はこれから十分に議論してもらえばよく、テレビカメラの前で急いで結論を出すべきではない。
◎10月19日木曜日
この日火山噴火予知連絡会拡大幹事会(会長:石原和弘 京都大学名誉教授)が開かれ「火山噴火予知連絡会拡大幹事会見解」が火山の状況に関する解説情報 第24号(10月19日16時45分)で発表された。
これまでのところ、大きな噴石の火口外への放出や火砕流はみられず、火山灰を噴出する活動が続いています。火山灰の放出量は、16日までで数十万トンと見積もられています。一時的に日量1万トンを超える火山ガス(二酸化硫黄)の放出量も観測されています。火山灰の付着成分の分析から、高温のマグマに由来する火山ガスが関与したと考えられます。
この噴火に先立ち、今年7月頃から霧島山を挟むGNSS基線で、霧島山の深い場所での膨張を示すと考えられる伸びの変化が続いています。また9月下旬から新燃岳の火口直下付近で火山性地震が増加しました。その後、10月9日に傾斜変動を伴う火山性微動が発生し、10月11日の噴火に至りました。この傾斜変動は、新燃岳の北西数kmの地下深くにあると考えられるマグマだまりの収縮と、新燃岳付近のわずかな膨張を捉えているという解釈も可能です。
噴火開始後には、低周波の微動や地震の増加もみられます。また、緩やかな傾斜変動が9日の微動以降、16日頃まで継続しました。以上のことから、今回の活動はマグマが関与した噴火であると考えられます。
2011年の新燃岳の噴火活動では、1月26日から31日にかけて多量の火山灰と軽石、溶岩を噴出するマグマ噴火が発生し、その後、大きな噴石を飛散する噴火が数カ月間断続的に発生しました。この活動の中で、急激な収縮がみられたマグマだまりは、その後に収縮前と同程度に回復していると考えられます。
当面、火山灰を噴出する噴火活動は継続すると考えられます。また、現在も地下深くのマグマだまりにはマグマが蓄積されていると考えられ、今後、多量のマグマが新燃岳直下へ供給されれば、規模の大きな噴火が発生する可能性もあります。
分かったようでまるで分かっていない見解だな( ´∀` )
GNSS基線が伸びる観測されたのも、火山灰を大量に放出する現象があったのも、もとをただせば地下のマグマ溜まりの影響なのに、「今回の活動はマグマが関与した噴火である」という発表にいったい何の意味があるのか。
上川瀬名@Yokohama_Geo
霧島山(新燃岳)の火山活動に関する火山噴火予知連絡会拡大幹事会見解/気象庁(PDF) https://t.co/vbQtT3rxff 「以上のことから、今回の活動はマグマが関与した噴火であると考えられます」 …マグマが関与しない噴火ってどんな噴火なんですか?
2017年10月19日 17:33
火山噴火予知連絡会自体、そろそろ名称を変えるべき時なんじゃないの?
ちなみに気象庁の「火山の状況に関する解説情報」では最初の噴火を報じた第13号から
2.防災上の警戒事項等
火口から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石や火砕流に警戒してください。
風下側では火山灰だけでなく小さな噴石(火山れき)が風に流されて降るおそれがあるため注意してください。
爆発的噴火に伴う大きな空振によって窓ガラスが割れるなどのおそれがあるため注意してください。
「爆発的噴火」という言葉を用いて、マグマ噴火を警戒している。
「火山噴火予知連絡会拡大幹事会見解」を読む限り今のところマグマ噴火の兆候を捉えていないと考えてよいのかもしれない。マグマ噴火があるかどうかは今後の観測次第だ。
中村美千彦@Nakamura_Mitch
マグマに高濃度で含まれる二酸化硫黄などのガス成分は、マグマが浅いところまで上昇して圧力が下がると溶けきれなくなり分離する。細かい岩石の亀裂などを容易に高速で上がってくるため、マグマ本体に先んじて地表に到達する。このため、過去の本格的マグマ噴火でも、信頼性の高い予測指標となった。
2017年10月15日 21:02
この一週間自分の Twitter も火山関係以外のアカウントをミュートしまくって情報を追っかけていたが、もとに戻すとして、このブログも何らかの進展があったら更新する感じにしたい。