草津白根山(奥山田/逢ノ峰)気象庁監視カメラより
2018年1月23日午前9時59分ごろ草津白根山で噴火があったと気象庁が発表した。
<草津白根山に火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)を発表>
本白根山で噴火が発生したもよう。鏡池付近から1キロメートルの範囲では警戒が必要。
<噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引上げ>**(本 文)**
1.火山活動の状況及び予報警報事項
草津白根山では、本日(23日)09時59分に傾斜変動を伴う振幅の大きな火山性微動を観測しました。本白根山で噴火が発生したもようです。
なお、噴火の詳細は現在調査中です。
本白根山鏡池付近から概ね1キロメートルの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒してください。
よくみると噴火が発生したのは「本白根山」とあるのだが、実は今回ハザードマップで想定されていない場所から噴火したのが大きなポイントなのだ。草津白根山の噴火ハザードマップによると、こうある。
草津白根山ハザードマップの円の中心にあるのは白根山の湯釜という場所であって、本白根山は噴火の危険個所としてはノーマークだった。そのため草津白根火山観測所長も「予想外の場所だった」と述べている(毎日新聞)。
さらに今回は噴火活動に伴う直前の火山性微動まで兆候が一切なかったことも災いした。以下の挿絵は1月23日13時に発表された火山活動解説資料より。
上川瀬名@Yokohama_Geo
草津白根山、噴火に伴うとものと思われる9:59の火山性微動の直前まで、前兆と言えるような変化はほぼ全く観測されていない。観測機器により噴火の前兆を捉えることの限界を思い知らされる。 草津白根山の火山活動解説資料、観測点配置図/気… https://t.co/tl0yyOQjBH
2018年01月23日 14:15
そのため今回は前兆が捉えにくい水蒸気噴火ではないかと考えられている。しかもこの付近の火山活動は約5000年前に本白根山ができた噴火から1500年前の噴火までしか知られておらず、それ以降はハザードマップで警戒されていて活動実績もある北方にある湯釜がもっとも噴火すると思われていたのだから、今回スキー場で被災した方は運が悪かったとしか言いようがない。過去の御嶽山噴火災害が紅葉のシーズンで日中だったのが災いしたのと同様、今回の噴火がもしロープウェイの営業していない夜間や吹雪だったら被害はもっと少なくなっただろう。
早川由紀夫@HayakawaYukio
何が起こったか。本白根山火口列北端の北東火口縁から10時ころ噴火。30分以内に収まったみたい。火山灰1000トン、四万温泉まで降灰。火山弾400メートル、火砕流200メートル。ひとり死亡。
2018年01月23日 17:31
ちなみに今回噴火した本白根山はこちら(Google map 3D)。山頂の凹みにあるのが鏡池で、今回噴火が発生したのは鏡池のある山頂より一段下がった凹み、 鏡池北火砕丘らしい。なおこの山の右手を通る草津国際スキー場の本白根ゲレンデの清水沢コースや、ロープウェイ山麓駅下にある青葉山ゲレンデは噴火に伴い安全確認ができるまで使用禁止になったが、草津国際スキー場の天狗山ゲレンデ、御成山ゲレンデは営業するそうだ。
また近くの草津温泉にも噴火の影響は及ばない。2014年の御嶽山噴火のように、一度水蒸気噴火を起こしたらもうこれっきりになるかもしれない(永久に噴火しないのではなく、当分の間噴火しないという意味だけど、過去の「ただちに影響はない」のように言葉は受け取り方でいくらでも変わるから難しい)。以後情報が入り次第更新ということで。
【参考にした記事】草津白根山2018年1月23日噴火の迅速解釈 - Togetter。 ただし迅速解釈というだけあって今後現地調査の結果が公表されれば訂正されるものがあるかもしれない。フジテレビの動画にある噴気を指して「新火口」と断定している節とか。
【2018.1/23 22:22追記】
毎日新聞の動画でみる黒い火山灰の分布をみると、鏡池北火砕丘の北側のへりが新火口で間違いなさそうだね。
うさはかせ Prof.Lièvre@usa_hakase
たしかに鏡池ではなくてその北隣の火口(赤◯付近)から噴火したことがわかる。上はGoogleMap、下は毎日新聞写真。https://t.co/mrR46bxWP8 https://t.co/cWWDOviQjK
2018年01月23日 14:36
【2018.1/24 0:25補足】気象庁やハザードマップが述べる「3000年前の噴火」という数字は古いデータに基づいたもので、現在ではこの噴火は4800~5000年前とされている。また気象庁が述べない本白根山の1500年前の噴火については最近の研究で明らかになったもので、
[SVC48-11] 草津白根火山本白根火砕丘群の完新世の噴火履歴
鏡池火砕丘の活動は12L層の形成年代と同時期の約5000年前に起こったと結論される.また,鏡池火砕丘本体の上位の火山弾着弾層のうち,KG2層とKG5層の火山弾は,各々鏡池と鏡池北火砕丘構成物と同じ岩石学的特徴をもち,これらの火砕丘頂部の火口の拡大時に放出された可能性がある.KG5層直下の黒ボクの年代(1.5~1.4 cal. ka)から,約1500年前まで鏡池北火砕丘で活動が起きていたようである.
また,各火砕丘の表層部に北側に隣接する火砕丘に由来する火山弾が見られることから,本白根火砕丘群の活動は,古本白根火砕丘,新本白根火砕丘,鏡池火砕丘,鏡池北火砕丘の順に,南から北へと変遷したと推測される.本白根火砕丘群のうち,鏡池北火砕丘またはその火口が形成された年代は約1500年前であり,本白根火砕丘群では,これまで推定されていた活動年代よりも最近までマグマ噴火が起きていたことが明らかになった.
とあるが、いずれにしてもこのあとの噴火活動は北側の湯釜に移っていたし、御嶽山の事例と違ってわずか1km離れた隣の山では常時観測体制が敷かれていたので噴火に伴う変動は分かったが、すぐ噴火したので噴火警報を出すことはできなかった。それだけ不意打ちの噴火だった。これは今の科学ではどうすることもできないと思う。