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箱根ロープウェイは大涌谷駅まで延伸 その1【再掲】

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観光サミット野外観察の一コマ大涌谷三叉路

去る2016年3月4日箱根火山観光サミットの野外観察に参加した時、こんな話を聞きました。

―――今回残念ながら大涌谷に入る条件がクリアできませんでしたが、年内、それも近い将来再び大涌谷に入れるようになるでしょう。最初車は無理だと思いますが、段階的に、まずロープウェイで大涌谷駅に行けるようになります。その時には大涌谷の黒タマゴも販売できるようになります。―――

聞いた直後、ツイートしたりフェイスブックに書かないように念を押されたので、この話自体はあまり広まっていないと思います(オフレコにするべき話と思えなかったので、コッソリ書きましたけどね)。



数日後の3月9日、大涌谷遠望ライブカメラの運用が始まりました(温泉地学研究所の発表)。2月中にカメラは設置していたようですが、野外観察の場で説明はありませんでした。

それからほどなくして4月15日小田原市で開かれた防災協議会で「箱根ロープウェイの大涌谷駅延伸」が決定されました。

日経新聞4月16日付
箱根ロープウェイ、姥子-大涌谷の運行再開へ 23日に


神奈川県箱根町などは15日、同町・大涌谷の小規模噴火で一部運休している箱根ロープウェイの姥子―大涌谷の運行を23日に再開すると発表した。火山ガスの濃度が下がってきたため運行が可能と判断した。大涌谷は箱根の観光名所で、運行再開で観光客の増加が期待される。観光関係者からは「全線開通に向けて大きな一歩だ」と歓迎の声があがった。

記事には「火山ガスの濃度が下がってきた」とありますが、それは昨年末までと比べての話です。

「箱根大涌谷のいま その3【箱根火山の今を理解する】」で触れましたが、昨年9月、早雲山別荘地で二酸化硫黄が 1.5ppm そして大涌谷橋で 3.4ppm を超えることがありました。そのため昨年12月に発表された研究成果発表会講演要旨集「箱根山 2015 年噴火とその前後の表面現象」においても

11月20日、箱根山の噴火警戒レベルは1(活火山である事に留意)に下がりました。しかし、大涌谷園地では時折10ppmを越える二酸化硫黄ガスが観測されています。これは、大涌谷の中の火口、噴気孔、蒸気井から放出されている噴気が高温なため

と解説されていました。

しかしながら大涌谷橋で24時間観測するようになった今年1月下旬以降、箱根ロープウェイの延伸が決まった4月15日までのデータをみますと、

大涌谷周辺の火山性ガスについて
大涌谷橋ガス観測器 測定結果

刺激臭を感じる二酸化硫黄の最大値は 0.7ppm が最高(3月18日)となり、二酸化硫黄が一切検出されない日(2月18日・25日、3月11日・15日・25日など)もあるようになりました(箱根町「大涌谷周辺の火山性ガスについて 」ページ)。

2016042310333500_HKNKNE2016042310350300_HKNKNE
気象庁火山カメラより

さて大涌谷駅営業再開される4月23日当日の午前中、大涌谷は時折噴気をかなり盛大に上げていました。

4月23日10時28分桃源台駅4月23日10時37分桃源台駅

しかしながらちょうどその頃、桃源台駅から報道関係者が続々と大涌谷駅に向かって取材に出発していて、まったく問題とされていませんでした。

この時間桃源台駅の一般客はまばらで順番待ちの行列すらなかったので、桃源台港のビューレストランでケーキセットを食べに行ったのですが、



席で海賊船を眺めながらしばしくつろぐかと思った矢先、Twitterで「11時からセレモニーがある」という情報を聞きつけてあわてて戻る羽目に。しかしセレモニーは陰も形もなかったですね(汗)このアナウンスにある通り、関係者と報道陣だけでやったのでしょう。┐(´ー`)┌

11時半頃

さて11時半になると、駅構内に大涌谷目当てのお客さんが増えてきました。そこでようやく順番待ちの行列ができると、報道陣が最前列の女性にインタビューを始めました。

この方、報道陣の矢継ぎ早の質問に要領よく答えるので、きっと箱根ロープウェイが送り込んだサクラなのだろうと思っていたのですが、後で伝え聞いたところによると、誰よりも早く大涌谷に行きたいがために早雲山駅に車を停めてわざわざ切符を買ってバスに乗り朝8時半に桃源台駅に着いたとか、昨年最後に箱根ロープウェイに乗ったのがたまたま5月5日だったとか、「大涌谷に1年ぶりに逢いに行く」発言で、大涌谷への愛にあふれた方で正直ビックリしました(笑)

大涌谷愛好家としてインタビューを受けるにふさわしい方でした。

県知事登場

さて11時45分には神奈川県知事が構内に登場。駅構内に展示されたさがみロボット産業特区のメカと記念撮影会みたいなことをやっていたようです。

火山災害軽減化ロボットシステム火山活動調査飛行ロボット

展示されていたのは「火山災害軽減化ロボットシステム」(左)と「火山活動調査飛行ロボット」(右)の2種類。「火山災害軽減化ロボットシステム」は移動ロボット研究所が製作したもので、長さ 220 cm × 幅 140cm × 高さ 318cm(コーリニアアンテナ高さ)で重量 190kg(バッテリー込)。傾斜角度 30 度の登坂性能とトラバース角度 25 度の斜面の横切りが可能(キャタピラの高さを段違いに変えられる)。平坦地の走行速度は秒速40m。3つのカメラと火山ガスセンサーそしてクレーンを備え、リモートで操作可能(…といって操作する側も目視できる距離しか離れていないんですけどね)。「火山活動調査飛行ロボット」は幅 85cm ×高さ 55cm で重量 3.0kg。防錆処理や撥水加工が施してあり、各種センサーも備えたオートパイロットのドローンです。離陸重量は最大 8.0kg ということなので、もしや超常現象で一躍有名になったドローンと同じ型ですかね(汗)

ロボットプロジェクト

神奈川県産業技術センター「火山活動対応ロボット緊急開発プロジェクトチーム」の初会合は5月28日で、火山活動がどうなるか分からない早々よりロボットに大涌谷を任せる可能性を検討していた模様。基本的にはドローンで立入禁止区域(火口)の測定をするようですが、飛行時間 20 分ですから常時モニタリングするわけにもいかず。動きの遅い地上走行車は大涌谷駅の外で作業員がリモートコントロールするので、神奈川県が火山対応と力をいれている割にいまひとつの出来なのですが、まあいいでしょう。

話を戻します。



12時、大勢の報道陣が見守る中、大涌谷駅への改札が始まりました。駅長による改札の後、乗客ひとりひとりに万一の時に使うメディカルシート(ウェットティッシュ)が配られました。

メディカルシート

これは病人の体を拭く大判のボディシートらしいのですが、配布資料によりますと、どうしても火山ガスの臭いが気になる人が万一のときにゴンドラ内で口や鼻にあてがうためのもので、必ず使わないといけないものではありません。

ただし乗車前に何度も何度も注意を受け、またこの注意を受けるために桃源台駅に来ないといけないのですが、

◆アレルギー性喘息の方
◆気管支疾患の方
◆呼吸器(肺)疾患の方
◆心臓疾患の方
◆心臓ペースメーカーを装着している方
◆体調不良の方

これらの症状をもつ方は生命の危険があるため乗車できない決まりになっています。また妊娠中の方、乳幼児、アレルギー体質の方、高齢者も「乗車を取りやめることを含めて充分ご検討ください」となっています。

箱根町が指定する警戒区域ながら、今の大涌谷は誰でも行けるところですが、突発的に火山ガス濃度が上がる可能性を考慮した措置となっています。

注意事項

あと一度乗車すると大涌谷駅にお手洗いはなく外にも出られません。姥子駅に戻ってくるまで我慢する羽目になりますので、乗車前に済ませておきましょう。

桃源台駅桃源台駅

さて箱根ロープウェイのゴンドラは定員18人なのですが、桃源台発はだいたい10名程度で出発しました。そして姥子駅に近づいたころ、ようやく大涌谷の上の方が見えてきました。

さて桃源台駅で僕に順番をゆずってくれた外国人旅行者の方、大正解(汗)



乗り合わせた報道カメラマン(複数)が観光客の尋問に夢中で、鬱陶しいことこの上ない。"Do you like happy?" とか「ハネムーンなのか聞いてくださいよ」とか、そんなのどうでもいいよ。

みんな景色を見たいがために長時間並んで待っていたのに、そんなことはおかまいなしにカメラ目線を要求してきましたからね。まあ僕は興味ないので基本無視しましたけど(笑)



黙って写真を撮れないカメラマンのおかげで、音楽うるさくてスイマセン。

12時12分、姥子駅出発。ほどなくして右手に威勢のよい噴気が見えてきました。実は姥子駅近くの船見岩でも眺められる冠ヶ岳噴気域(大涌谷の上方斜面)なのですが、近づくにつれ姥子からでは一直線上になって分かりにくい玉子茶屋付近の噴気も分かれて見えてきました。

# 噴気の出具合は刻々と変化するため、冠ヶ岳噴気域が活発でない場合もありえます。

大涌谷南側1714

画面左が大涌谷園地(駐車場や大涌谷黒たまご館)で、画面右にある山が冠ヶ岳(1409m)。冠ヶ岳の左手斜面にあるのが冠ヶ岳噴気域、そして冠ヶ岳頂上の真下に見えるのが玉子茶屋の噴気(「G地区」とも呼ばれる)。

自然噴気孔1715冠ヶ岳噴気域ズーム
玉子茶屋1723玉子茶屋ズーム

余談ですが、萬年先生の大涌谷噴気地帯における過熱蒸気―その歴史と消滅の理由」によりますと、大涌谷に出る噴気の場所はこの百年間でさえずいぶん変わったそうで、大正時代に「一時は三尺以上も泥湯を噴き上げた」という、今は活動していない「閻魔台噴気孔」跡地などの推定がなされています。興味がある方はどうぞ。

北側斜面1712
ロープウェイ北側斜面

一方ロープウェイより北側にある台ヶ岳の方に目をやると、一面の林に火山ガスの影響を見てとることはできませんでした。落葉樹はまだ葉を出していませんでしたが、花を咲かしている樹もありましたし。

実は翌24日も悪天候の中大涌谷に向かったのですが、シーンと静まり返る白い霧の中、ゴンドラに吹き付ける風の音に混じってホトトギスの鳴き声が響き渡っていました(当時のツイート)。

昨年の噴火で火山灰で林が覆われて斜面が灰色一色に染まったところもありますが、それは大涌谷のごく一部のことだったと付け加えておきます。ふつうに野鳥が生活できる自然も広がっていますと。

大涌谷駅1717Google map 曰く「2号貯水池」

ところで大涌谷駅から見える自然噴気をみて「温泉製造中」と思う人は少なからずおられますが、残念ながら大涌谷温泉は今の駅舎からでは見えないところで人工的に作っています。どうしているかというと、仙石原のイタリ湿原(現・箱根カントリー倶楽部地内)の水をポンプで大涌谷駅周辺の貯水池にくみ上げて、大涌谷の谷間にある蒸気井で地下から噴き出す噴気とくみ上げた水を混合させて温泉を作り、強羅や仙石原の一部温泉地に供給しています。蒸気井に送る水をためている貯水池のひとつがこちら。

昨年の噴火の時「箱根で温泉が出なくなった」という噂がまことしやかに伝えましたが、噴気の勢いが強すぎて蒸気井で温泉を作ることができなかったり、噴火警戒区域に指定されたため蒸気井のメンテナンスができなくなっただけ。湯量の減った大涌谷温泉以外はどこも問題なかったのですが、一部の旅館が沸かし湯で対応したり、休業した日帰り温泉が報道されたため、勘違いした人が多かったものと思われます。

大涌谷温泉を入れて、今の箱根には二十湯あると言われていますから(ただし堂ヶ島温泉と早雲山温泉には今入れないはず)。

蒸気井の仕組み蒸気井の仕組み

貯水池からの水を蒸気井の上からゆっくり落として、大涌谷の噴気と混合させ火山ガスの成分を含んだお湯(温泉)をつくっています。この展示は模型とともに2015年7月に箱根ビジターセンター内で見つけたのですが、2016年4月に訪れたときにはなくなっていました。そのうち大涌谷にある箱根ジオミュージアムで見られるようになるでしょう。話を戻します。

大涌谷駅手前1718大涌谷駅到着1721

大涌谷駅にロープウェイが到着したのは12時20分でした。

≪つづく≫

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