「箱根ロープウェイは大涌谷駅まで延伸 その1【再掲】」の続きです:
大涌谷駅が再開されて早一か月。すでにあちこちで「大涌谷に行きました」という記事が書かれています。とはいえ駅の外には誰も出られませんから、大涌谷駅で撮る写真はおのずと次の2カットになります。
![新火口と黒タマゴ館1722]()
![大涌谷上部1724]()
大涌谷駅の隣にある黒たまご館の左手の噴気(大涌谷新火口)か、それとも館の右に見える玉子茶屋の噴気ですね。時々 Twitter で検索かけていますが、大涌谷駅からの眺めでこの構図以外の写真を撮る人は見つけられませんでした(写っているのが空だけとか黒い屋根だけとかね。笑)。
あと写真を撮るとすれば大涌谷駅駅舎内でしょうか。今年初めて箱根ロープウェイに乗ったので、桃源台駅から大涌谷駅についたゴンドラがそのまま駅舎内でUターンして桃源台駅に向かうのを目の当たりにして驚きました。
大涌谷駅でUターンする
Uターンした先は下山するだけ
今はまだ営業再開のめどがつきませんが、もし早雲山駅へ向かえるならロープウェイを乗り換える必要があるのですね。であれば、昨年5月から乗車できない早雲山ー大涌谷駅区間のゴンドラがたまに動いているのを見るのはどうしてかなと思いました(今度箱根ロープウェイに乗るとき聞いてみよう)。
3月17日、ライブカメラにて
そう言えば箱根火山観光サミットの野外観察の時、ゴンドラ内で火山ガス濃度を測定しているという話を聞きました。そのデータ取りの甲斐があってこそ、箱根ロープウェイ大涌谷駅延伸が実現したのでしょう。
さて箱根ロープウェイの「営業区間運転延長のお知らせ」にはこう書いてありました。
眺めのよい大涌谷駅2階にある駅食堂には行けないため、たしかに噴煙は見えても噴煙「地」は見えないですね。
昨年9月撮影
そのため生で大涌谷の噴煙地を見たければ、警戒レベルが下がった今もなお、某別荘地西側か明神ヶ岳ハイキングコースを歩くしかありません。
今年3月に強羅駅から宮城野城址までタクシーで片道2000円弱かけて某別荘地に続く林道を踏破したのですが、林道から大涌谷はあまりよく見えませんでした。しかも乗降場所に指定した宮城野城址には小さな梅林もあるのですが、そこから地元のタクシー会社に迎えの連絡を入れたら「場所が分からないので、行きの乗務員を手配します」と言われるくらい、箱根町ではマイナーな場所でした。A(^_^;
また脱線しましたので、話を大涌谷駅に戻します。A(^_^;
気象庁の大涌谷カメラがとらえているとおり僕が23日12時22分頃に駅から写真を撮ったとき、大涌谷からまとまった噴気が上がっていたのですが、
![4月23日1222大涌谷カメラ]()
気象庁火山カメラ画像より
家に帰っていくつかニュース映像を確認していた時にあることに気が付きました。
もしかしたら噴気が少ない時、昨年できた新火口が見えるのではないか、と。
たとえば ANN ニュース動画「1年ぶりに眺める大涌谷 箱根ロープウェイ運転再開(16/04/23)」の開始16秒後に注目してください。あ、動画が削除されたときのために、キャプチャを取っておきますか。
ANN News 動画より
はい、この赤い矢印で示したところです。撮影時刻が分かりませんが、噴気が左横になびいてぽっかり開いた火口が見えるではありませんか。
これが昨年の噴火騒ぎでできた 15-1 火口だと思うのです。当初 15-9 火口と勘違いしましたが、次の理由で考えを改めました。
「箱根大涌谷のいま その3【箱根火山の今を理解する】」で紹介した、第133回火山噴火予知連絡会資料の中に「15-1~15-9火口群周辺のスケッチ」というイラストがあったのを覚えておられるでしょうか。
![火口群周辺のスケッチ]()
第133回火山噴火予知連絡会資料より
これを見ますと、大涌谷の谷間の一番上にできた昨年の新火口の高さ関係がばっちり分かります。
次に新火口がどのように成長していったのかを、昨年7月に出された「箱根山2015年噴火の火口・噴気孔群(暫定版)」で調べます。すると昨年6月29日夕方までにまず 15-9 火口(直径20メートル)ができ、さらにやや小ぶりの 15-5 15-6 火口ができたのですが、6月30日夜から7月1日早朝にかけて 15-1 火口(直径20メートル)ができると、15-5 15-6 15-9 火口の活動が弱まったそうです。
![火山活動解説資料]()
箱根山火山活動解説資料(平成28年4月)より
これらの情報を踏まえた上で、最新の箱根山火山活動解説資料を確認すると、今もなお 15-1 火口は活動中ということですので、大涌谷駅から谷間の中に見えた口は 15-1 火口ではないかと判断した次第です。イラストでは 15-9 火口が斜面の高いところにありますが、ほぼ1年の雨風やまわりの噴気で元あった大きな火口はあとかたもなく消えてしまったのでしょう。
ちなみに箱根火山観光サミットの野外観察の際、大涌谷のVTRの説明の中で萬年先生が、すでに火口の活動はかなり弱まっていると話されていました。詳細を度忘れしてしまいましたので、阿蘇ジオのお姉さんや駿河局さんのツイートを頼ってみたのですが、それらしいツイートはなかったですね。残念。A(^_^;
ところで大涌谷を眺めにいく機会があれば便利かなと思って、発表資料をもとに昨年11月にこんな火口地図も作っていました。
箱根山2015年噴火火口周辺地図
![大涌谷2015火口]()
かなり大雑把な位置関係を Google Map に落とし込んだだけなのですが、大涌谷駅からの視線方向に直線を伸ばすと、写真のイメージと合っている感じなので、これで大涌谷駅から 15-1 火口までの距離を測ってみました。すると約 320 メートルありました。高度差は 10 メートルくらいかな。
これだけ距離があれば、大涌谷内で仮に火山ガス濃度が上がっても、火山ガスは重いので谷間を下るでしょうし、(たいていは北西の早雲山の方に吹く)風向きが味方すれば、大涌谷駅が閉鎖になる二酸化硫黄濃度 0.2ppm にすぐに達することはなさそうですね。
とはいえ営業時間内に閉鎖濃度に達してしまうと大涌谷駅への案内を中止すると駅員さんに伺っているので、いちおう運行時間は桃源台駅発 15:30 となっていますが、もし大涌谷に行く予定がある人は午前中に計画するとよいかもしれません。
たとえば5月6日金曜日に火山ガス濃度の都合で大涌谷駅への運行が中止されていた模様。その日の日中箱根町宮城野の二酸化硫黄測定値は最大 0.007ppm で(大涌谷駅より200メートル低い)大涌谷橋も最大 0.2ppm だったのですが、
![5月6日0859小塚山北東]()
![5月6日1154小塚山北東]()
![5月6日0859大涌谷]()
![5月6日1154大涌谷]()
気象庁火山カメラ画像より
大涌谷の噴気が姥子の方に流れたことで大涌谷駅の火山ガス濃度も上がり、運転が中止されたと推察されます。
余談になりますが、これから箱根ロープウェイに乗って富士山が見られるだろうかと心配なときは、気象庁火山カメラ画像で確認すると便利です。
![気象庁火山カメラ画像]()
![プルダウンメニューで富士山荻原]()
ちょっととっつきにくいページなのですが、画面右側にある観測点をクリックして出てくるプルダウンメニューから「富士山荻原」を選択するだけで、御殿場市からの眺めにはなりますが、富士山自体が雲に隠れているかどうかの確認はできます。ただし山の天気は変わりやすいことにご留意ください。
もっとも火山カメラ画像はこういう目的で使うものではありませんが、箱根山のように日々刻々と噴気がうつろいゆく山を眺めるのは飽きないものです。
気象庁火山カメラ(箱根山小塚山北東)2016年5月1~8日
最近はこんな動画を作りつつ箱根周辺の地震活動を並行して調べて、大涌谷の噴気がどういうタイミングで高く上がるのかなんてことを考えてみたり…と、群発地震はすっかり収まってしまいましたが、今でも箱根は興味が尽きない山です(笑)
…というわけで箱根ロープウェイそっちのけで大涌谷の話をずらずらと書いてしまいましたが、次は「箱根大涌谷のいま その3【箱根火山の今を理解する】【12月9日火災の追記】 」の続きとして書くつもりだった、大涌谷北側斜面新噴気域の話でもしてみようかと思います。
ただし島村英紀氏が主張したとされる「富士山よりも大きかった箱根山の上半分が3200年前の噴火で吹き飛んだ」というデマカセの出典が不明なので、これはとりあえず置いておきたいと思います。とはいえひとつはっきりさせておくと、箱根山 - Wikipedia #活動史にある「25万年前には古箱根火山と呼ばれる標高2,700m にも達する富士山型の成層火山が形成された」説を裏付ける物証は何もなく、いま箱根ジオパーク内でなされている箱根の噴火史はこれと全く異なることを書き添えておきます。
大涌谷駅が再開されて早一か月。すでにあちこちで「大涌谷に行きました」という記事が書かれています。とはいえ駅の外には誰も出られませんから、大涌谷駅で撮る写真はおのずと次の2カットになります。


大涌谷駅の隣にある黒たまご館の左手の噴気(大涌谷新火口)か、それとも館の右に見える玉子茶屋の噴気ですね。時々 Twitter で検索かけていますが、大涌谷駅からの眺めでこの構図以外の写真を撮る人は見つけられませんでした(写っているのが空だけとか黒い屋根だけとかね。笑)。
あと写真を撮るとすれば大涌谷駅駅舎内でしょうか。今年初めて箱根ロープウェイに乗ったので、桃源台駅から大涌谷駅についたゴンドラがそのまま駅舎内でUターンして桃源台駅に向かうのを目の当たりにして驚きました。


今はまだ営業再開のめどがつきませんが、もし早雲山駅へ向かえるならロープウェイを乗り換える必要があるのですね。であれば、昨年5月から乗車できない早雲山ー大涌谷駅区間のゴンドラがたまに動いているのを見るのはどうしてかなと思いました(今度箱根ロープウェイに乗るとき聞いてみよう)。

そう言えば箱根火山観光サミットの野外観察の時、ゴンドラ内で火山ガス濃度を測定しているという話を聞きました。そのデータ取りの甲斐があってこそ、箱根ロープウェイ大涌谷駅延伸が実現したのでしょう。
さて箱根ロープウェイの「営業区間運転延長のお知らせ」にはこう書いてありました。
お客さまの安全の確保の観点から、原則的に駅舎内においては一部のみ立ち入りとさせていただき、駅舎内からの噴煙地の見学もできません。
「大涌谷 駅食堂」、「大涌谷 駅の店」の営業はいたしません。
眺めのよい大涌谷駅2階にある駅食堂には行けないため、たしかに噴煙は見えても噴煙「地」は見えないですね。

そのため生で大涌谷の噴煙地を見たければ、警戒レベルが下がった今もなお、某別荘地西側か明神ヶ岳ハイキングコースを歩くしかありません。
今年3月に強羅駅から宮城野城址までタクシーで片道2000円弱かけて某別荘地に続く林道を踏破したのですが、林道から大涌谷はあまりよく見えませんでした。しかも乗降場所に指定した宮城野城址には小さな梅林もあるのですが、そこから地元のタクシー会社に迎えの連絡を入れたら「場所が分からないので、行きの乗務員を手配します」と言われるくらい、箱根町ではマイナーな場所でした。A(^_^;
また脱線しましたので、話を大涌谷駅に戻します。A(^_^;
気象庁の大涌谷カメラがとらえているとおり僕が23日12時22分頃に駅から写真を撮ったとき、大涌谷からまとまった噴気が上がっていたのですが、

気象庁火山カメラ画像より
家に帰っていくつかニュース映像を確認していた時にあることに気が付きました。
もしかしたら噴気が少ない時、昨年できた新火口が見えるのではないか、と。
たとえば ANN ニュース動画「1年ぶりに眺める大涌谷 箱根ロープウェイ運転再開(16/04/23)」の開始16秒後に注目してください。あ、動画が削除されたときのために、キャプチャを取っておきますか。

はい、この赤い矢印で示したところです。撮影時刻が分かりませんが、噴気が左横になびいてぽっかり開いた火口が見えるではありませんか。
これが昨年の噴火騒ぎでできた 15-1 火口だと思うのです。当初 15-9 火口と勘違いしましたが、次の理由で考えを改めました。
「箱根大涌谷のいま その3【箱根火山の今を理解する】」で紹介した、第133回火山噴火予知連絡会資料の中に「15-1~15-9火口群周辺のスケッチ」というイラストがあったのを覚えておられるでしょうか。

第133回火山噴火予知連絡会資料より
これを見ますと、大涌谷の谷間の一番上にできた昨年の新火口の高さ関係がばっちり分かります。
次に新火口がどのように成長していったのかを、昨年7月に出された「箱根山2015年噴火の火口・噴気孔群(暫定版)」で調べます。すると昨年6月29日夕方までにまず 15-9 火口(直径20メートル)ができ、さらにやや小ぶりの 15-5 15-6 火口ができたのですが、6月30日夜から7月1日早朝にかけて 15-1 火口(直径20メートル)ができると、15-5 15-6 15-9 火口の活動が弱まったそうです。

箱根山火山活動解説資料(平成28年4月)より
これらの情報を踏まえた上で、最新の箱根山火山活動解説資料を確認すると、今もなお 15-1 火口は活動中ということですので、大涌谷駅から谷間の中に見えた口は 15-1 火口ではないかと判断した次第です。イラストでは 15-9 火口が斜面の高いところにありますが、ほぼ1年の雨風やまわりの噴気で元あった大きな火口はあとかたもなく消えてしまったのでしょう。
ちなみに箱根火山観光サミットの野外観察の際、大涌谷のVTRの説明の中で萬年先生が、すでに火口の活動はかなり弱まっていると話されていました。詳細を度忘れしてしまいましたので、阿蘇ジオのお姉さんや駿河局さんのツイートを頼ってみたのですが、それらしいツイートはなかったですね。残念。A(^_^;
ところで大涌谷を眺めにいく機会があれば便利かなと思って、発表資料をもとに昨年11月にこんな火口地図も作っていました。
箱根山2015年噴火火口周辺地図

かなり大雑把な位置関係を Google Map に落とし込んだだけなのですが、大涌谷駅からの視線方向に直線を伸ばすと、写真のイメージと合っている感じなので、これで大涌谷駅から 15-1 火口までの距離を測ってみました。すると約 320 メートルありました。高度差は 10 メートルくらいかな。
これだけ距離があれば、大涌谷内で仮に火山ガス濃度が上がっても、火山ガスは重いので谷間を下るでしょうし、(たいていは北西の早雲山の方に吹く)風向きが味方すれば、大涌谷駅が閉鎖になる二酸化硫黄濃度 0.2ppm にすぐに達することはなさそうですね。
とはいえ営業時間内に閉鎖濃度に達してしまうと大涌谷駅への案内を中止すると駅員さんに伺っているので、いちおう運行時間は桃源台駅発 15:30 となっていますが、もし大涌谷に行く予定がある人は午前中に計画するとよいかもしれません。
たとえば5月6日金曜日に火山ガス濃度の都合で大涌谷駅への運行が中止されていた模様。その日の日中箱根町宮城野の二酸化硫黄測定値は最大 0.007ppm で(大涌谷駅より200メートル低い)大涌谷橋も最大 0.2ppm だったのですが、




気象庁火山カメラ画像より
大涌谷の噴気が姥子の方に流れたことで大涌谷駅の火山ガス濃度も上がり、運転が中止されたと推察されます。
余談になりますが、これから箱根ロープウェイに乗って富士山が見られるだろうかと心配なときは、気象庁火山カメラ画像で確認すると便利です。


ちょっととっつきにくいページなのですが、画面右側にある観測点をクリックして出てくるプルダウンメニューから「富士山荻原」を選択するだけで、御殿場市からの眺めにはなりますが、富士山自体が雲に隠れているかどうかの確認はできます。ただし山の天気は変わりやすいことにご留意ください。
もっとも火山カメラ画像はこういう目的で使うものではありませんが、箱根山のように日々刻々と噴気がうつろいゆく山を眺めるのは飽きないものです。
気象庁火山カメラ(箱根山小塚山北東)2016年5月1~8日
最近はこんな動画を作りつつ箱根周辺の地震活動を並行して調べて、大涌谷の噴気がどういうタイミングで高く上がるのかなんてことを考えてみたり…と、群発地震はすっかり収まってしまいましたが、今でも箱根は興味が尽きない山です(笑)
…というわけで箱根ロープウェイそっちのけで大涌谷の話をずらずらと書いてしまいましたが、次は「箱根大涌谷のいま その3【箱根火山の今を理解する】【12月9日火災の追記】 」の続きとして書くつもりだった、大涌谷北側斜面新噴気域の話でもしてみようかと思います。
ただし島村英紀氏が主張したとされる「富士山よりも大きかった箱根山の上半分が3200年前の噴火で吹き飛んだ」というデマカセの出典が不明なので、これはとりあえず置いておきたいと思います。とはいえひとつはっきりさせておくと、箱根山 - Wikipedia #活動史にある「25万年前には古箱根火山と呼ばれる標高2,700m にも達する富士山型の成層火山が形成された」説を裏付ける物証は何もなく、いま箱根ジオパーク内でなされている箱根の噴火史はこれと全く異なることを書き添えておきます。